校長室だより

2024.03.05

高等学校 第59回卒業式 校長式辞

 三寒四温。
 厳しい寒さと、やわらかな温かさを繰り返しながら季節は確実に春へと向かっています。
 今日こうして、ご来賓の方々、保護者の皆様をお迎えして、広島城北高等学校第五九回卒業式を挙行できますことは、卒業生、在校生、教職員にとって大きな喜びです。
 本日ご臨席をたまわりました皆様方には、日ごろから城北の教育に対して、温かいご支援をいただき、さらには巣立ちゆく五九回生の門出に華を添えていただきましたことに心から御礼申し上げます。

 59回生、206名のみなさん、卒業おめでとう。
 城北での学びの日々は、個性豊かな先生方からたくさんの「知識」を獲得するだけにとどまらず、最高の仲間との学校生活で、さまざまな価値観に出会い、多くの「気づき」を得ることもできた貴重な時間だったと思います。
 みなさんが得た「知識」と「気づき」は、これからの「行動」に活かされてこそ、はじめて意味を持ちます。
 「学んで厭かず」の「学ぶ」は、「知識」であり「気づき」です。
 「教えて倦まず」の「教える」には、勉強や経験を通して獲得した知識や技術を「活かす」「行動する」という意味が含まれています。
 城北スピリットをこれからの社会で活かし、周囲の人を巻き込んでいくリーダーシップを発揮できる人になってください。

 59回生が城北を去る日が来たことには一抹の寂しさを感じながら、卒業生の一人として言葉を送ります。
 それは「創造的な人生をおくってほしい」ということです。
 今ここに、卒業を迎えたみなさんの世代の50%は107歳まで生きると言われています。今、みなさんは残りの人生のスタートラインに立っています。
 残りの人生はとても長い。
 これまでの18年間で経験したこととは比べようもない、どんな山よりも高く、海よりも深い、大きな〝なにか〟に出くわすことが、きっとあります。自分にとって意味のない〝なにか〟は起こらない。すべて自分が成長するための糧だと受け取って、真剣に向き合ってみましょう。〝なにか〟から目を背けず、正面から向き合っていると、その先の見通しが見えてくる時がきっと来るはずです。
 自分で答えを見つけ出したい!という情熱がわいてくるはずです。その情熱に共感してくれる仲間が必ず集まって来ます。そうすると情熱が一層燃え上がる。ひとりではできないことも誰かといっしょならできるかもしれません。
 「できるかどうか」ではなく「どうやったら実現できるか」と考えるのが「創造的な人生」です。

 大リーグドジャースの大谷翔平選手は、創造的な人生を過ごしている一人ではないでしょうか。彼が日本球界入りを決断したきっかけは、栗山監督の「誰も歩いたことのない道を歩いてほしい」ということばだったそうです。
 一見難しそうな二刀流を「どうすればそれができるのか」という発想で自分の可能性を広げていく姿に、私たちは惹かれます。

 アニメの主人公ではドラゴンボールの悟空が、そのようなテーマをもって描かれているように思います。悟空を象徴する「ま、いいか」は、「〇〇すべき」とか「〇〇しなければ」と肩に力を入れて張り詰めるのではなく、緩んで生きることで自分の可能性を大きく広げ、さらに人をも緩ませることができることばです。

 いつも冒険心をもって新しいことに挑戦し、自分の限界を試し、リスクをとりながら何回もやり直す。そんな人になろうとすることが、「学んで厭かず教えて倦まず」の校訓を体現した生き方ではないでしょうか。

 最後に、ご参列の保護者の皆様方に一言御礼申し上げます。
 入学以来、城北の教育にご理解とご協力をいただき誠にありがとうございました。身体の成長と心の変化が交錯して感情をうまくコントロールできないこともあった彼らにハラハラされたこともあるでしょうし、私共が至らない面も多々あったと存じますが、教職員一同、精一杯彼らと関わらせていただきました。ご容赦いただきたいと存じます。
 本日、一八歳の成人としてたくましく立派に成長した彼らの姿を見て、心から嬉しく思います。ご子息の卒業で、ご縁はいったん切れますが、今後とも城北の教育に関心を持ち続けていただけたらありがたく存じます。

 59回生のみなさんには今後、「あなたも城北か」でつながる縁が待っています。これからの人生を創造的に暴れてください。
 みなさんの将来が希望に満ちたものであることを祈念し、式辞とします。

一覧に戻る