校長室だより

2019.04.22

平成31年度1学期始業式校長あいさつ

 新しい年度がスタートしました。中学生、高校生ともに新しい仲間たちとの出会いの中で、良好な人間関係が結ばれることを願っています。
 今日はその親密な人間関係を構築する上において,これまでにも引用したことがありますが、心に留めてほしいことをお話します。
 みなさんはハリネズミという動物を知っていると思います。名前のように身体全体に,おおげさに言えば弓矢の矢のような物をもっている動物で,敵が襲ってくると,丸い針だけの固まりになってしまう動物です。
 このハリネズミを例にとりながら,19世紀の半ばまで活躍した哲学者にショウペンハウアーという人がこんなことを言っています。「人間は寒い日のハリネズミのようなものだ。近づきすぎると痛い。遠ざかりすぎると寒い。ちょうど適当な距離をとって暮らさねばならない」と。
 ショウペンハウアーには,9歳下の妹がいましたが,年齢が離れているので,一人っ子と同じような環境にあったそうです。兄弟が少ないと,どうしても自分ひとりだけの世界に入り込みがちになり,例えば私たちが遠くから見ていて「良い人だなあ」と親しみをもって近づいていっても,なんか自分の殻に閉じこもっていてそれ以上人を寄せ付けないのかなあ,と感じることがあります。
 しかし幼い頃,兄弟げんかをしながら育った人は,体や心をぶっつけあって,お互いにハリネズミの針に触れているといわれます。そしてそのぶつけ合いの中で,ハリネズミの針は痛いには痛いが,慣れてしまうと案外痛くない,かえって刺激があって心地よいものだ,と思うようになる。また,針自体も鋭い先がすり減って痛くないようにもなる。こうして自分だけの殻から抜け出していくのだそうです。
 ここに極めて人間らしい,互いに長所も短所も認めあった相互関係が生まれてくるのではないでしょうか。
 兄弟の少ない人や一人っ子の人は難しいかも知れませんが,擬似兄弟をつくることは決して難しいことではありません。それがホームルームであり、部活であり、城北という学舎だと思います。
 学校という集団生活の中で,摩耗していたくなくなる針を作りながら,お互いを認めあう生活がスタートできることを心から願っています。

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