校長室だより

2016.03.23

第53回 中学校卒業式 校長式辞

 校内の木々のつぼみもふくらみ、あとは花を咲かせるのを待つばかりとなっています。あちら、こちらで、新しい息吹を感じます。そして、本校でも今日、新たな道のスタートラインに立ち、今から走り出そうというみなさんをこうして送り出します。
 中高一貫校の本校にあって、卒業を目の当たりにするとき、みなさんの姿が今後校内から見えなくなるということにはなりませんが、これまでみなさんを育んでこられた保護者のみなさん、そして様々にみなさんを導いてこられた担任の先生、授業担当の先生方にとりましては、義務教育を終え新たなステップに駆け上っていくみなさんを見るにあたり、その感慨は言葉に表せないものもあると拝察します。
 さて、四月からは同じ正門を潜るとしても、みなさんはすでに高校生として校内に入ってくるわけです。高校から新たに入学する数十名の仲間たちも加わります。様々な意味で新たな出会いが待っています。
 ところで華麗に空を舞うムササビという動物のことを聞いたことがあると思いますが、誰しもが魅力的な生き物として人気のある動物です。山梨県の都留市では、ムササビの見られる町として有名ですが、空を舞っているムササビを撮影するために、県内外を問わず、たくさんの動物写真愛好家たちが集まります。夜行性で、シャッターチャンスの少ないムササビは、動物写真愛好家にとって、特別な意味をもつのです。
 たくさんの人を魅了するムササビですが、実はムササビは飛べないのです。グライダーのように滑空して降りてくるだけ、しかも夕方以降しか飛ばないムササビは、上昇気流も使えないので、上昇することは一切できません。木の上には、そう、爪を使って少しずつ地道に昇るのです。人は、ムササビの華麗なる滑空に心を奪われますが、地道に木を昇る姿に注目しようとはしません。陰で地道な努力をするから、華麗な姿でたくさん人々を魅了します。そして華麗なことのあとには、また地道な努力をしなければならない動物なのです。きっと「努力の持続」は、誰にとっても大変なことなのでしょう。だから「努力が大切」との逸話が多いのだと思います。
 一人ひとり、与えられた能力は違います。でも、誰も何かの能力を秘めています。自分の能力を最大限に発揮するよう努めることは、この世に生を受けた人間の義務でもあると思います。
 自分を生かす努力を考え、そして、続けてみましょう。そうすればその努力は皆さんを決して裏切ることはないと思います。
 アメリカの思想家に、ラルフ・エマソンという人がいますが、「希望を点の星につなげ」という有名な言葉を残しています。このことばは、このあとに「衣食の料をえるにすぎない、つまらない仕事に時間を費やすのはやめよう」と続くのですが、ただ単に、着るものや食べるものを手に入れるだけの目的で、時間を無駄に使うことはやめようではないか」、つまり自分の持っている能力を駆使して、高い理想を実現していこうではないか、と強く呼びかけています。
 みなさんはいま、それこそ、われを自分を忘れて学習に向かっていると思います。ときには校庭で全身汗と泥にまみれながら、一つのボールを追い、全力を尽くして戦います。それは大変美しく、感動的でさえあります。
 私たちにとって大事なことは、自分のやるべきことに、全力投球していくということなのです。若さというのは、自分の目標に向かって、それこそ理想に向かって情熱を燃やしていく目の輝きなのです。
 四月からは高校生として、さらに城北件男児を目指し、大きく胸を張って前に進んでいくみなさんと再開できることを心待ちにしています。みなさんの高校生としての新しい学園生活がすばらしく輝くものになるよう心から祈って式辞とします。

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