校長室だより

2016.03.04

第51回 高等学校卒業式 校長式辞

 平成二十八年三月一日、卒業生のみなさん、生涯忘れ得ぬ日を迎えました。高校時代は人生第二の誕生と言われ、大きく成長を遂げる三年間を過ごし、卒業という日を迎えたのです。このよき日に当たり、多くのご来賓、保護者の皆様の心からのご祝福をいただき、第五十一回卒業証書授与式を挙行できますことを、心から感謝申しあげます。
 ただいま卒業生二百十四名に卒業証書を授与いたしました。そのとき卒業生の目の輝きに、この三年間の教育の成果を見る思いがいたしました。「おめでとう」「よくがんばったね」という言葉に、目で、心の中で「ありがとうございました」と返してくれたことを私の脳裏にしっかりと焼き付けておきたいと思います。
 また、長い間、陰に日向に、いろいろとお心を痛められ、ここまで育ててこられた保護者やご家族の方々のお気持ちは、いかがであったでしょうか。思いひとしおのものがあるとお察しいたし、改めてお祝い申しあげます。本当におめでとうございます。
 さて、三年間、木々の息吹を感じる春に始まり、若さみなぎる夏に汗し、木々の葉の散る秋に愁い、寒風吹き荒む冬の厳しさに絶え、心と知識を育んできました。この間、国の内外を問わず社会の変化にも激しいものがあり、時には悩み、悲しみ、怒ることもあったと思います。この間に生じました事象を追いましても、その激しさがうかがえます。地域戦争、自然災害、教育問題、経済状況等々、喜びもありましたが、それ以上に危機とも言える現象が津波のように押し寄せてきました。
 みなさんは、このような社会状況の中においても、多くの方々の支えによって今日の日を迎えることができました。現在の生活は、豊かで幸せでありましょう。みなさんの中には高校二年生の十一月に北マリアナ諸島、サイパンに修学旅行に参加した人もいます。そこでは華やかなリゾート地の顔と、七十年前に起こった痛ましい戦争という渦中にあって、学びたくても学べなく、まして青春を謳歌するなど考えることすらできず、若くして散っていった人々の現実を感じる瞬間もあったことと思います。今の豊かさや平和は一朝一夕によって得られたものではありません。これからも、もっと、もっと大切にしていかなければなりません。今のみなさんがあるのは、父母、兄弟、先生、友人、地域の方々の暖かさの中で育まれた努力の所産なのです。今日という日は、多くの人々の心に感謝し、今までの自分を振り返る日でもあると思います。
 幸いみなさんは、この広島城北高校で「学んで厭かず、教えて倦まず」というすばらしい校訓のもとで学業に励みました。自らを律し、知的好奇心を膨らませ、豊かなこころをもった生き方は、円滑な社会生活を送るうえで欠くことのできないものであり、自分を大切にし、同時に人をも大切にする生き方につながるものです。みなさんが本校で培った力をもってすれば、どのような苦境に立とうとも必ずや正しい方向を見出し、さらに高い次元へと歩みを進めていけるものと確信しております。
 Life is what happens to you while you’re busy making other plans.
 「人生とは何かほかのことに夢中になっている時にある。」
 これは、生まれたばかりの息子ショーンに捧げたジョン・レノンの「ビューティフル・ボーイ」の一節です。たくさんの壁にぶつかり、傷つきながらも、自分の信念を貫いたビートルズのメンバーの残した言葉です。みなさんがこれから生きていく社会には、様々な情報が溢れています。柔軟な頭脳を鍛え、情報の選別能力を高め、何が適切なものであり、自分に必要なものかを選別できることが大切になります。ジョンの言わんとするところは、大切な時間を無駄にすることなく生き抜くことではなかろうかと思います。
 みなさんの将来は、未知数ではありますが、みなさんには、本校で身につけた、絶えず学び、苦しくても努力しつづけるという基礎的な力があるはずです。みなさんが三年間の学校生活の中で折りに触れて見せてくれた素直で明るく若さに溢れた姿は、鮮明な印象として私たちの心に強く残っています。
 おわりになりましたが、ご来賓のみなさん、保護者のみなさん、そして教職員のみなさん、本日はありがとうございました。厳粛なうちに、すがすがしく卒業証書授与式が挙げられましたことを心から感謝し、卒業生の洋々たる人生が開けるよう祈念して式辞とします。

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