校長室だより

2025.04.11

令和7年度 1学期 始業式 校長あいさつ

 4月7日、今日をみなさんはどんな気持ちで迎えましたか?

 これまで、始業式や終業式では、認知心理学の本から引用した言葉をいくつか紹介してきました。今回も認知心理学の本に書かれていたことを私なりの解釈で話します。

 先生は授業でいろいろな教科を教えます。評論の読解、古文の文法や現代語訳、室町時代の政治、微分積分や数列、化学変化や原子・分子、不定詞や動名詞の使い分け。みんなが理解できるような教材や手法を駆使してその教科の知識を伝えようとしています。

 これは、知識を伝えることができると信じているからです。でも、本当にそうでしょうか?と考えるのが認知心理学です。
教科書には、教科の内容が網羅されています。しかし、教科書を隅から隅まで読んでも知識を身につけることはできません。教科書に満載されている教科の情報を先生は、みんなが受け取りやすいように教材や手法を工夫して効率よく伝えようとしています。でも、運よくそれらを覚えたとしても、みなさんにとってはただの「記憶」でしかありません。
 物理で重力加速度を習っても、その知識を必要とされる場面で引き出して使うことができなければ何の意味も持たないことになります。一問一答で暗記した情報は断片的で、記憶としてとどまることはあったとしても、知識として定着することはないということです。

 みなさんが家庭や学校・社会の中でいろいろな経験を重ねて成長していくと、断片的だった情報同士がつながって意味を持つようになって行きます。
 授業で英語を何年習ってもさっぱり話せない、聴き取れないということがあります。認知科学では知識が身体化されていないと言います。
 英語圏で生活して、朝から晩まで英語を使って過ごした状態は身体化されているということになります。

 「学んで厭かず教えて倦まず」の校訓にある、「学ぶ」は、「知識」であり「気づき」です。「教える」は、勉強や経験を通して獲得した知識や技術を「活かす」「行動する」という意味を含んでいます。みなさんが得た「知識」と「気づき」のすべてが「学び」です。その「学び」は、これからの「行動」に活かされてこそ、はじめて大きな意味を持ちます。
 「行動」は、認知心理学でいう「身体化」です。
 学校では「知識」と「気づき」の掛け算を手に入れます。そこに「行動」を掛け算することこそ大切です。「行動」がゼロだったら掛け算の答えはいつまでもゼロのままです。
 「知識」「気づき」「行動」の掛け算で、一人一人の学校生活に大きな価値を生み出す一年にしましょう。

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