校長室だより

2024.03.28

中学校 第61回 卒業式 校長式辞

 厳しい寒さと、やわらかな温かさを繰り返しながら、春はもうそこまで近づいてきました。だからこそ、いっそう風の冷たさを感じる時季でもあります。

 今日こうして、保護者の皆様をお迎えして、広島城北中学校第61回卒業式を挙行できますことは、卒業生、在校生、教職員にとって大きな喜びです。
 本日ご臨席をたまわりました皆様方には、日ごろから城北の教育に対して、温かいご支援をいただき、さらには卒業生の門出に華を添えていただきましたことに心から御礼申し上げます。

 卒業生のみなさん、卒業おめでとう。
中高一貫校として、6年間の計画のもとにみなさんを迎えてから、3年が経ちました。「義務教育」の課程を修了したこの時点で、これまでを振り返ってみましょう。

 小学校の6年間、中学校の3年間、合計9年の間、家庭・学校・社会でみなさんは、家族や友だち、先生をはじめ周りの人からたくさんのことを学んできました。
しかし、中学受験の佳境を迎えようとするころからの約3年、未曽有の感染症に振り回され、今しかできない、ここでしかできないさまざまのことにチャレンジすることすら許されない、制限された時間を過ごさざるを得ませんでした。
 誰のせいにもできない、限られた環境ではじまった中学校生活も、3年生になってやっと平穏を取り戻し、体育祭、文化祭、修学旅行も以前の形に近づけて再開することができました。
 城北での3年間は、個性豊かな先生方からたくさんの「知識」を獲得するだけでなく、最高の仲間との学校生活で、さまざまな価値観に出会い、多くの「気づき」を得ることもできた貴重な時間だったと思います。

 「学んで厭かず」の「学ぶ」は、「知識」であり「気づき」です。
 「教えて倦まず」の「教える」は、勉強や経験を通して獲得した知識や技術を「活かす」「行動する」という意味を含んでいます。
 みなさんが得た「知識」と「気づき」のすべてが「学び」です。その「学び」は、これからの「行動」に活かされてこそ、はじめて大きな意味を持ちます。
 「知識」「気づき」「行動」の掛け算が一人一人の残りの人生に価値を生み出します。

 日々生活していく中で「心」も「からだ」も「あたま」も成長し続けます。
 「知識」「気づき」は「自然数」です。
 「知識」「気づき」は学校生活や社会生活の中で日々増えて行きますが、「行動」にはゼロもマイナスもあります。
 「知識」×「気づき」×「行動」という掛け算の答えを大きくするためにはどうすればいいのでしょうか。
 「知識」「気づき」「行動」のどれかが「ゼロ」だったら、答えはいつまでも「ゼロ」のままで止まってしまいます。マイナスの行動は、掛け算の結果もマイナスにしてしまいます。
 「0」と「1」の差はとても小さく見えますが、その中身は実に大きい。

 これからも自分の行く手を阻むいくつかの壁に出くわすことがあると思います。
 その壁をどうやって乗り越えていくか、ちょっと立ち止まって周りを見渡し、視野を広げてたくさんの選択肢を見つけ出し、その中から実現可能な方法を探る。
 「こうやればできるかも」と思いを巡らすうちに、実現できそうな予感にワクワクしてくる。
 ワクワクしながら前に進もうとすると、自分の周りの変化を楽しむことができます。
 いっぽう、変化を避けて現状維持を好むという思考は誰にもあるものだと思います。明日から急に変わろうとしても、なかなか簡単に変わることはできません。

 遠足や修学旅行の前の日にワクワクドキドキするのは、日常とは違う明日を前にしているからではないでしょうか。
 ワクワクもドキドキもない毎日が続くということは「変わらない」「現状維持」ということです。
変化を恐れるあまり現状で足踏みしてしまうと、自分が成長する機会も失ってしまう。
 与えられた勉強だけをこなしていればよかった時期もあったかもしれません。
 しかしこれからは自分から率先して新しいことに挑んでいく、ゼロをイチに変えていく、ワクワクドキドキを自分から手繰り寄せていきましょう。

 学校に通って教育を受ける、仕事をする、定年を迎えて退職するという、これまで多くの人が経験してきた人生モデルがありました。
 みなさんは、これを同じように経験しないかも知れません。おそらくは「仕事をする」という期間はこれまでよりもずっと長くなります。社会生活の中で誰かのために貢献する「仕事」に就く時が近づいてきます。
 卒業という節目を迎えた今日は、自分自身の人生をつくる入口です。扉を開けて一歩を踏み出しましょう。

 最後に、ご参列の保護者の皆様方に一言御礼申し上げます。
 入学以来、城北の教育にご理解とご協力をいただき誠にありがとうございました。身体の成長と心の変化が交錯して感情をうまくコントロールできないこともある彼らにハラハラされたこともあるでしょうし、私共が至らない面も多々あったと存じますが、教職員一同、精一杯彼らと関わらせていただきました。ご容赦いただきたいと存じます。

 本日、成長した15歳の彼らを見て、心から嬉しく思います。扉の向こうにどんな生き方があるのか、ご家族で話す機会をもってください。
 卒業するみなさんのあしたが希望に満ちたものであることを祈念し、式辞とします。

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