2016.05.23
校長だより 5月 特別号
〜 遠い時空を超えた絆に感動 〜
13日(金)にある方から学校のメールにお便りをいただきました。以下その内容を紹介します。
風薫る五月、木々の緑の美しい季節となりました。さて、本メールの差し出し人であります私は、去る4月7日『中学校第56回、高等学校第54回入学式』での校長先生御式辞の中で取り上げて頂いた、スズメバチ研究家の伊澤と申す者でございます。拙い私の文章にこめられた教育的意義を、より深く正しく生徒さん達にお伝え頂いた事に心より感謝申しあげます。しかしこのメールで私が本当にお伝えしたい「核心」はその事ではなく、「人と人との縁の深さと不思議さ」についてでございます。
それは、城北中・高等学校入学式から数日の事でした。私の家に突然一本の電話がございました。「お久しぶりです。○○でございます。」それは私の小学校時代の担任の先生からのお電話でした。今から53年も遠い昔、神奈川県内の小学校で私はその先生に受け持って頂きました。しかし僅か数ヶ月後に私は東京に転校し、先生もほどなく四国に引っ越され、その後は賀状のやりとりのみで今日まで至っておりました。電話は続きます。「私の孫が4月に広島の城北中・高等学校に入学致しました。広島は、私のいる四国からは遠いのですが、思い切って入学式に出席致しました。そうしましたら校長先生のお話の中にスズメバチ研究家の伊澤裕一という名前が出てきて、伊澤さんは小学生の頃からトンボや蜂が大好きでしたから、これはもう絶対に間違いない、是非お伝えしなければと思って、念のために学校のホームページで確かめて、それでこうしてお電話を差し上げました。」
岩本校長先生、単なる偶然、ただの個人的な思い出話、かも知れない内容をここまでお読み頂きありがとうございます。しかし、「神奈川での僅かな出会いの後、東京と四国、50余年という遠い時空を経て、広島で思いもよらない接点に遭遇した」という事の背景には、人の心の決して途切れることのない強さ、深さがあるに違いないと私は強く思いました。それがあったればこそ、僅か数ヶ月しか教わっていない先生を今も忘れることが無く、先生も虫好きな少年の私を記憶して下さっていた、そう思うのです。
人生における人との出会いのほとんどは、偶然によるものに違いありません。しかしその数多の人たちとの出会いは、人生の数多の宝との出会いの入り口であると私は思います。偶然による出会いを大切にする心を持ち、出会った相手を思いやり尊重する心を持ち続ける事ができれば、数多の出会いは数多の宝となって、その人の人生を豊かなものにしてくれるでしょう。その時、出会いは偶然を越えてかげがえのない必然となったのだと私は思います。
岩本校長先生御式辞の中で私の拙文を取り上げて下さった偶然、そこに私のかつての恩師が居合わせたという偶然、それは私に、人と歩む人生の大切さ豊かさを改めて思い起こさせてくれました。本当にありがとうございます。
広島城北中・高等学校の生徒さん達が、校長先生をはじめ先生方のご指導のもと日々研鑽され立派に成長されてゆきますよう心よりお祈り申しあげます。
スズメバチ調査・研究 伊澤裕一
これは私が式辞の中で「ハチも羽を忘れる」というテーマで、巣の中のゴミを外に運ぼうとして、ゴミと一緒に崖の下まで転がっていくハチは、どうして自分の羽を羽ばたいて跳び上がらないのだろうか、という伊澤先生のお話を引用させていただいたもので、ここにいるみなさん全員は大きさは違うかも知れないが必ず羽を持っているのだから、これから城北でその羽をどのように使って飛び立っていくのか学んでいきましょう、といった内容で新入生を激励したことに対する伊澤先生のお便りでした。
私も式辞の中で多くの学者や研究家、あるいは作家、冒険家などのお話を紹介することが多々ありますが、こうして直接お便りをいただいたのは初めての経験であり、そのことに加えて伊澤先生の「人との出会いを大切にする」というお言葉に感動し、先生のお許しを得てこうして紹介した次第です。先日伊澤先生からは著書を数冊ちょうだいしました。図書館に保管し一人でも多くの生徒が読んでくれるものと期待しています。
まさに爽やかな5月に、心も爽やかになる感動体験を紹介したく、特別号としてホームページに加えさせていただきました。最後になりましたが、遠くからご参加いただいたお爺様、並びに伊澤先生に心からお礼申しあげます。
平成28年5月 校長 岩本 光彦