校長室だより

2015.04.07

平成27年度 1学期 始業式 校長あいさつ

 みなさんおはようございます。
 この体育館には6学年がそろって学校集団を構成しますが,今はまだすべての学年がそろっていません。でも,明日には183名の中学1年生と、218名の高校1年生が入学します。新年度を迎え、皆さんもクラス替えが行われ,新しいクラスの中で、新しく親しい人間関係を結んでいくことになります。 
 今日はその親密な人間関係をつくりあげるうえで,心に留めてほしいことを、少しお話します。
 みなさんはハリネズミという動物を知っていると思いますか?名前のように身体全体に,弓矢の矢のような物をもっている動物で,敵が襲ってくると,丸い針だけの固まりになってしまう動物です。
 このハリネズミを例にとりながら,19世紀の半ばまで活躍した哲学者にショウペンハウアーという人がこんなことをいっているそうです。「人間は寒い日のハリネズミのようなものだ。近づきすぎると痛い。遠ざかりすぎると寒い。ちょうど適当な距離をとって暮らさねばならない。」
 ショウペンハウアーには,9歳下の妹がいましたが,年齢が離れているので,一人っ子と同じような環境にあったそうです。兄弟が少ないと,どうしてもナルシズムつまり自己愛「私ってなんてすばらしい人間なんだろう。自分が見てもほれぼれする」という心理状況をナルシズムというのですが,私たちが遠くから見ていて「良い人だなあ」とあこがれて近づいていくと,なんか自分の殻に閉じこもっていてそれ以上人を寄せ付けないのかなあ,と感じることがあります。しかし幼い頃,兄弟げんかをしながら育った人は体や心をぶつけあって,お互いにハリネズミの針に触れているのと同じだと言います。そしてそのぶつけ合いの中で,ハリネズミの針は痛いには痛いが,慣れてしまうと案外痛くない,かえって刺激があって心地よいものだ,と思うようになるそうです。また,針自体も鋭い先が削れて、丸くなり、痛くないようにもなる。こうしてナルシズムが克服されていくのだそうです。
 こうして人は、人間らしい,互いに長所も短所も認めあった相互関係が生まれてくるのではないでしょうか。兄弟の少ない人や一人っ子の人は,今さら自分で兄弟姉妹を増やすことはできませんが,擬似兄弟をつくることは決して難しいことではないと思います。それがホームルームであり,クラブ活動ではないでしょうか。学校という集団生活の中で,ナルシズムという針を折って,お互いを認めあう生活をスタートしてください。さわやかな新年度となることを願って挨拶とします。

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