2025.03.26
中学校 第62回 卒業式 校長式辞
厳しい寒さと、やわらかな温かさを繰り返しながら、春はもうそこまで近づいてきました。だからこそ、いっそう風の冷たさを感じる時季でもあります。
今日こうして、保護者の皆様をお迎えして、広島城北中学校第62回卒業式を挙行できますことは、卒業生、在校生、教職員にとって大きな喜びです。
本日ご臨席をたまわりました皆様方には、日ごろから城北の教育に対して、温かいご支援をいただき、さらには卒業生の門出に華を添えていただきましたことに心から御礼申し上げます。
卒業生のみなさん、卒業おめでとう。
中高一貫校として6年間の計画のもとにみなさんを迎えてから、3年が経ちました。卒業というタイミングで、この3年間何を学んできたのか振り返ってから、新たな一歩を踏み出すことにしましょう。
『学びとは何か』という著書で心理学者の今井むつみさんは、人から学んで熟達しようとするとき「楽器の演奏にしろ、スポーツにしろ、それ以外のスキルにしろ、ほとんどの場合私たちはだれかがそれをしているのを見て、それを真似てやってみることから始める」と書いています。「しかし、その時、他者の行為を分析し、解釈し、心の中でその動きをなぞり、それを実際に自分の身体を使って繰り返すことが、人を模倣して学ぶときになくてはならない」とも書いています。
みなさんに置き換えると、授業を聞いているだけでは学習したことにはならないということです。授業中に先生が何を伝えようとしているのかを自分で「分析」し「解釈」し、授業以外では何度も何度も「読む」「聴く」「話す」「書く」を繰り返すことで、始めて学習が成立し、熟達していくということになります。
「学んで厭かず」の「学ぶ」は、「知識」であり「気づき」です。
「教えて倦まず」の「教える」は、勉強や経験を通して獲得した知識や技術を「活かす」「行動する」という意味を含んでいます。
みなさんが得た「知識」と「気づき」のすべてが「学び」です。その「学び」は、これからの「行動」に活かされてこそ、はじめて大きな意味を持ちます。
「知識」「気づき」「行動」の掛け算が一人一人の残りの人生に価値を生み出します。
ビリギャルを指導した坪田信貴さんは、『才能の正体』という著書で「才能があると言われている人たちは、その人に合った動機付けがまずあって、そこから正しいやり方を選んで、こつこつと努力を積み重ねている」「誰でも、何かを始めて、それを継続していければ、やった分だけ成長して、経験した分だけ経験値は増えて、必ず伸びていく。能力が伸びれば、その部分が際立ってきて、才能になる可能性がある」と書いています。
「やればできる」という人の思考は「できそうにないからやらない」となります。才能のある人が使う言葉は「やれば伸びる」です。「できるかどうか」ではなく「どうやったらできるのか」を考える人が結果を手に入れることができるということです。
自分の行く手を阻む壁に出くわしたとき、どうやってそれを乗り越えていくか、ちょっと立ち止まって周りを見渡し、実現できそうか方法を探る。
「こうやればできるかも」と思いを巡らすうちに、実現できそうな予感にワクワクしてくる。ワクワクしながら前に進もうとすると、自分の周りの変化を楽しむこともできます。
遠足や修学旅行の前の日にワクワクドキドキするのは、日常とは違う明日を前にしているからです。ワクワクもドキドキもない毎日が続くということは「変わらない」「現状維持」であり、自分が成長する機会も失ってしまいます。
与えられた勉強だけをこなしていればよかった時期もあったかもしれません。しかし、もうすでに、みなさんは自分から率先して新しいことに挑んでいく、ゼロをイチに変えていく、ワクワクドキドキを自分から手繰り寄せていく年齢にいます。
卒業という節目を迎えた今日は、自分自身のこれからの人生をつくる入口にいます。扉を開けて一歩を踏み出しましょう。
最後に、ご参列の保護者の皆様方に一言御礼申し上げます。
入学以来、城北の教育にご理解とご協力をいただき誠にありがとうございました。身体の成長と心の変化が交錯して感情をうまくコントロールできないこともある彼らにハラハラされたこともあるでしょうし、私共が至らない面も多々あったと存じますが、教職員一同、精一杯彼らと関わらせていただきました。ご容赦いただきたいと存じます。
本日、成長した15歳の彼らを見て、心から嬉しく思います。扉の向こうにどんな生き方があるのか、ご家族で対話する機会をもってください。
卒業するみなさんのあしたが希望に満ちたものであることを祈念し、式辞とします。