2017.03.02
第52回 高等学校卒業式 校長式辞
早春の気が満ち,寒風に耐えた木々が早や小さな蕾をつけはじめ,ここ松傘山周辺にも春の息吹を感じる今日の佳き日,ご来賓,保護者のみなさま多数のご臨席を賜り,厳粛のうちにも晴やかに卒業証書授与式を挙行し,巣立ちゆく若人の門出を祝福して戴きますことは,真に有り難く,心からお礼申しあげます。
只今は二百三十名のみなさんに卒業証書を授与しました。卒業生のみなさん,おめでとうございます。みなさんはこの日をどんなにか心待ちにしていたことと思います。さきほどお渡ししました卒業証書の一字一句に三ヵ年の喜び,悲しみ,努力しあった姿がにじみ出ています。みなさんは,今日の卒業式で本校の卒業生となりました。在校生ではなく同窓生として仲間入りすることになりました。これからは,本校の同窓生としての肩書きを背負って生きていくことになります。本校卒業生の誇りをもって,後輩のためにもがんばってください。
皆さんの今日があるのは,これまで皆さんの不断の努力と精進が実を結んだ訳ですが,これまで陰に陽に無償の愛を傾けてくださったご両親をはじめ,家族の方々,そして先生方の限りない教育愛,また同窓生,地域の方々の物心両面のご援助の賜物であります。このことも深く心に銘記してください。
さて,卒業を現実のものとした今,皆さんは入学以来今日までの学業生活や友と綴った高校生活のいろいろな場面を思い起こし,改めて,深い感慨に浸っていることでしょう。どこまでも続く青空に地球が丸いことを再確認し,異文化の中で改めて自分自身をみつめなおしたサイパン研修旅行、大自然の雄大さと醍醐味を満喫した北海道修学旅行など,心に残る思い出は数限りないものと思います。
全米最優秀教師賞を受賞した,ロン・クラーク先生の言葉の中に,「自分のなれるもっともすばらしい人間になれ」という一節があります。
長い人生のあいだには,さびしさを感じることもあるでしょう。悲観にくれることもあるだろうし,自分の人生から何かが消えてしまったような思いになることもあるでしょう。どんな人生にも,ある程度の苦しみと悲しみがついてまわります。でもどれほど悪いことがおきようと,いつも自分が成長して,自分のなりたい人間,他人がまわりにいてほしいと思う人間になるための努力を忘れてはならない、と先生は説いています。笑い,家族,冒険,よい食べ物,挑戦,変化,そしてたえざる知識の探求,その7つがあれば,人は成長し,人生を楽しみ,自分でも誇りをもてる人間になれるはずだ,と結んでいます。
幸いみなさんは,この城北で「学んで厭かず・教えて倦まず」というすばらしい校訓のもとで学業に励みました。自らを律し,知的好奇心を膨らませ,豊かな心をもった生き方は,円滑な社会生活を送るうえで欠くことのできないものであり,自分を大切にし,同時に人も大切にする生き方につながるものです。みなさんが本校で培った力をもってすれば,どのような苦境に立とうとも必ずや正しい方向を見出し,さらに高い次元へと歩みを進めていけるものと確信しております。
皆さんが三年間の学校生活の中で折に触れて見せてくれた素直で明るく若さに溢れた姿は,鮮明な印象として私たちの心に強く残っています。学習に勤しむ姿,クラブ活動,体育祭や文化祭,クラスの名誉をかけて戦った球技大会などの諸行事への取組みの意気込みやエネルギーは素晴らしいものでした。そのとき味わった一つのことを成し遂げたこの上ない喜びを今思い起こしてほしいのです。そこには,共に力を出し合った友や支えてくださった先生の姿があったはずです。今後も一層,互いに手を携えていこうとする気持ちを大切にすることを心掛け,人の心の痛みの分かる人になって欲しいのです。
ところで人生は別れと出会いであると言われますが,これからも皆さんは多くの新たな出会いを経験することでしょう。人はすばらしい出会いによって希望と勇気を与えられ,明日を拓き,人生を豊かにすることができます。しかしよい出会いは,自分が謙虚であり寛容な気持ちで,自分自身を常に磨き上げていこうとする努力の中でこそ得られるものです。これからも人生のさまざまな場で出会った人たちと共に,目標に向かって努力し,その苦労と達成の喜びを分かち合うことのできる,心の豊かな人になってください。
おわりになりましたが,ご来賓のみなさん,保護者のみなさん,そして教職員のみなさん,本日はありがとうございました。厳粛なうちに,すがすがしく卒業証書授与式が挙げられましたことを心から感謝し,卒業生の洋々たる人生が開けるよう祈念して式辞とします。