校長室だより

2023.03.27

中学校 第60回 卒業式

 春爛漫を間近に控え、萌える命が大気の中に感じられる本日、保護者の皆様のご臨席の下、広島城北中学校卒業式を挙行できますこと、誠に光栄であり喜びに耐えません。ありがとうございました。
 卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。皆さんは城北中学での約1000日の課程を終え、これからの1000日、高校生活に向かって新たな一歩を踏み出そうとしています。思い起こせばコロナに祟られた3年間、最初の2年間は、多くの学校行事が中止となり、どこまでも続く変化のない日常の中、若さを出し切る機会も少なかったと思います。しかし昨年は、体育祭・文化祭・修学旅行を、制限の下ではありますが、実施できました。学校にとっても、皆さんにとっても、今後の大きな希望につながったとおもいます。その中で皆さんは、城北生として力を蓄えてきた。一人一人、その自分を誇りに思ってください。
 4月からの高校生活、同じ制服を身に付け、同じ敷地の中での生活が続きますが、流れる時間の質は違ってきます。高校生活は、ある意味、人生のうちで最も光っている時期といえます。なぜそうなのか?英語にpromisingという言葉があります。あらゆる経験が、あらゆる姿が、promise、有望な前途が約束されているかのように映る、中学時代よりもより一層想像可能な未来を期待させる、それが高校生です。そしてそれを支えるのが、ひたむきな心。高校時代の輝きは、未来への予感は、そのひたむきさあってのものです。
 皆さんは18歳で高校生のまま成人を迎えます。一人の大人と見なされるということです。
しかし、大人になるということはたやすいことではありません。大人になるということについて、ここでは3つのことを話します。

1 「それでもなお、人を愛しなさい。」
 マザーテレサは、座右の銘として、ケント・M・キースという人が書いた「逆説の10か条」という詩を取り上げています。その第一条、
「人は不合理で、わからず屋で、わがままな存在だ。それでもなお、人を愛しなさい。」
「それでもなお」という逆説を生きること。それが大人になるということです。
「それでもなお」という前向きな生き方の中に、大人になるカギがあると私は考えています。「それでもなお、人を愛しなさい。」
2 強みと弱み
高校では、一人一人の強み、弱みが、よりはっきりしてきます。これは学習の得意・不得意だけではありません。部活動、人間関係など、様々な場面で、自分の強みや弱みに直面し、その結果を引き受けなければならないことが多くなるでしょう。大切なことは、弱みを持った自分を否定するのではなく、受け入れ、自分の生き方に知恵として生かすことです。例えば、気の弱い自分に悩む人。その弱さは、多くの人間が抱える弱さを理解できる力になります。一方、人に優れた強みのある人。その強みを一途に磨くことは大切です。しかし謙虚さを失ったとき、その強みが逆にその人の弱みとなることがあります。自己を謙虚に見つめ、人生のいろいろな場面で、人に対する敬意を忘れず、その強みを本当に生かせる強みにする。たやすいことではありません。しかしそれが大人になるということです。
3 失敗を恐れない
失敗を恐れてはいけません。失敗のない人生とは、挑戦のない人生です。より高いもの、より良きものをめざせば、失敗はつきものです。悩みもついて回ります。しかし多くの悩みを抱えることは、みなさんのより良く生きたいという命の力が強いということでもあります。
悩みながら前に進む。成功と失敗、強みと弱み、喜びと悲しみ。その振れ幅こそが、やがて皆さんの人生に豊かな果実をもたらしてくれるでしょう。

 最後に、人種隔離政策と戦った元南アフリカ共和国大統領、ネルソン・マンデラ氏の言葉を贈ります。
 I never lose. Either I win or learn.
 「私は負けることはない、勝つか学ぶかだ」

 保護者の皆様、3年前、少し大きな制服に身を包んだご子息の入学時の記憶と、たくましく成長した本日の姿。その変化を実感され、感慨ひとしおの事と拝察いたします。誠におめでとうございます。
 私たち教職員一同、これからも、ご子息の命を輝かすべく、成長を見守って参りたいと思います。今後とも、ご理解・ご協力をよろしくお願いいたします。
 以上 式辞といたします。

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